約束
1
「今日な~!
ぎょうさん弁当買うてきてん!」
―牧原愛子―
中学3年生。
頑張ってきたテニスも夏休みで引退し、受験勉強一色の今日のこの頃。
「なんでなん?まあ愛子食いしん坊やしなぁ」
愛子の親友、友香が言った。
「今日朝ご飯食べてないねん」
「あー…。愛子には苦痛やね」
もうひとりの親友、美和が言った。
愛子は友達が多かったが、友香、美和の2人と特に仲が良かった。
「せやろー!?もう3時間目から死んでてん。せやから授業なんも頭に入ってへん」
「受験落ちたらどないすんの?」
「なんとかなるって!」
「川野と同じ高校行きたいんやろ?」
美和が愛子にビシッと言った。
川野勇人は、愛子の幼なじみで愛子の彼氏。
ニ中野球部のエースで、女子からの人気が高かった。
「あ~、勇ちゃんならあたしより頭悪いから大丈夫やろ~」
「あっ、せや、ずっと前から聞こう思てたんやけど何で“はやと”やのに愛子は“ゆうちゃん”て呼ぶん?愛子だけのあだ名なんやと思たけど…“はやと”の中に“ゆう”なんて入ってへんし…」