10年前の約束。



その日から葉山くんの鬼の特訓が始まったんだ。


「葉山くん、今日はうちに来ますか。」


「……………後ろついてくから。

いちいち誘うな。」


あぁ、誤解されたくないか。


「はい、すみません。

私帰ります。」



私が教室を出ると、そのあとすぐ葉山くんも出た。



うちは学校から近いけど

裏道の裏道みたいなところだから

家の前まで来れば生徒に見られることはない。



「葉山くん、ここ。」


「……………誰もいねーの?」


「うん。両親いないから。

兄がいるけど、バイトと彼女で忙しいから

夜は遅くまで帰ってこないから。」


「ふーん。」


私たちは一緒に家に入った。


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