10年前の約束。



「大貴くんはいつからピアノを弾いてるの?」


「5歳。」


「そっか。」


「俺さ、本当はピアノ嫌いだったんだ。」


「………え?」


「親がやれって言うからやってたんだ。

でも、10年前双葉病院に入院していた年下の女の子が

……………俺の初恋の相手がピアノ好きで…

それから俺はピアノが好きになったんだ。」


「……………10年前の双葉病院…。」


「その子の名前は結城凛音。」


……………やっぱり、そうなんだね…。


「俺は凛音ちゃんを喜ばせるために

ピアノを続けたんだ。」


……………どうしてだろう。

あんなに会いたかった人に

私は驚くほど冷静だ。



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