俺様黒王子とニセ恋!?契約
そう、それが正論だ。


篤樹も、親友の静川先輩には、彼の社内恋愛の話をしてるだろうと思った。
それはもちろん篤樹が静川先輩を信頼してるからだ。
そして、篤樹の信頼を一身にしている静川先輩が、他人にペラペラ話すわけがない。


わかってる。
聞き出そうとしたこと自体、私が間違ってるんだ。


だけど……。
もうこれ以上どうしたらいいの。


ジワッと涙が込み上げて来るのを感じる。
こんなとこで泣くわけにいかない。
静川先輩に迷惑をかけるだけだ。
私は慌てて大きく鼻を啜って、俯いて涙を誤魔化した。


「……私、すごく悩んで。それでも覚悟を決めたんです。静川先輩が、さっき私に言った決断。……篤樹と一緒にいたいから、割り切るって」


スン、と鼻を鳴らしながら、ボソボソとそう口にした。
へえ?と静川先輩が、驚いたような声を上げる。


「そういういいかげんな恋愛、出来るタイプじゃないと思うけどな。君は」

「……篤樹にもそう言って振られました。『俺じゃ、本物にしてやれないから』って……」


自分でも、ただの泣き言だと思う。
こんなことをウダウダ言っても、ますます静川先輩を困らせるだけだ。
そうわかっているのに、止まらない。
< 75 / 182 >

この作品をシェア

pagetop