ドルチェ セグレート
「わぁ。見てください、河村さん! イケメンですよ!」
レジカウンターの中で新商品の値段付けをしていると、後方で背を向けていた志穂ちゃんが突然言った。
私は反射的に顔を上げ、辺りを見回してみたけど誰もいない。
次に、振り返って志穂ちゃんに視線を向けると、どうやらリアルの話ではなかったらしいと気づく。
「あぁ。雑誌(それ)の話ね」
ラッピング用のカウンター上で広げている雑誌が目に入り、ちょっと冷やかな口調で答えてしまった。
それでも彼女はそんな受け答えになにか感じる様子も見せず、そのままそのページに釘付けだ。
仕事中に雑誌を普通に見ることは職務怠慢になる。
それでもカウンター内に雑誌がなぜあるのかというと、流行りの雑貨や小物が載ったりしてるからだ。
だけど、志穂ちゃんの発言は明らかに仕事と関係ないから、一応注意をしなきゃかな……。
まぁ、今日は店も閑散としてるから、そんなに目くじら立てて言うことでもないんだけど。
「えーと、志穂ちゃん。一応勤務中だし、そろそろ売り場の巡回を……」
「イケメンパティシエ! スーツもいいですけど、特殊な制服も魅力増しですよねぇ」
「パティシエ?」
あ、つい食いついてしまった。
志穂ちゃんにクルッと振り向かれたのが気まずくて、視線を泳がし、ひとつ咳払いをする。
泳がせた先に見えた誌面の〝イケメン〟に、私はさらに食いついた。
「この人っ……」
レジカウンターの中の店員が、全員背を向けるなんて言語道断。
それにも関わらず、背丈の低い志穂ちゃんに肩を並べるようにして、雑誌を二度見してしまった。
レジカウンターの中で新商品の値段付けをしていると、後方で背を向けていた志穂ちゃんが突然言った。
私は反射的に顔を上げ、辺りを見回してみたけど誰もいない。
次に、振り返って志穂ちゃんに視線を向けると、どうやらリアルの話ではなかったらしいと気づく。
「あぁ。雑誌(それ)の話ね」
ラッピング用のカウンター上で広げている雑誌が目に入り、ちょっと冷やかな口調で答えてしまった。
それでも彼女はそんな受け答えになにか感じる様子も見せず、そのままそのページに釘付けだ。
仕事中に雑誌を普通に見ることは職務怠慢になる。
それでもカウンター内に雑誌がなぜあるのかというと、流行りの雑貨や小物が載ったりしてるからだ。
だけど、志穂ちゃんの発言は明らかに仕事と関係ないから、一応注意をしなきゃかな……。
まぁ、今日は店も閑散としてるから、そんなに目くじら立てて言うことでもないんだけど。
「えーと、志穂ちゃん。一応勤務中だし、そろそろ売り場の巡回を……」
「イケメンパティシエ! スーツもいいですけど、特殊な制服も魅力増しですよねぇ」
「パティシエ?」
あ、つい食いついてしまった。
志穂ちゃんにクルッと振り向かれたのが気まずくて、視線を泳がし、ひとつ咳払いをする。
泳がせた先に見えた誌面の〝イケメン〟に、私はさらに食いついた。
「この人っ……」
レジカウンターの中の店員が、全員背を向けるなんて言語道断。
それにも関わらず、背丈の低い志穂ちゃんに肩を並べるようにして、雑誌を二度見してしまった。