太陽と月の行進曲
イラついて怒鳴ると、

「勇樹も落ちつけ! 奈々にあたるな!」

要に鋭い視線で睨まれる。

それから要は奈々の頭に手をかけて、自分の胸に引き寄せた。

あの小姑が、要のなすがままになっている?

驚きと痛烈な苛立ちと、ごちゃごちゃになって勇樹は舌打ちする。

「落ち着け? 賭けってなんだ? 加藤のことか?」

いつになく優しい口調の要に、奈々はしゃくりあげながら、切れ切れに答える。

「聖美と、木村が、つき……あうかどうか」

「うん?」

「それ、賭けに……してて。関口が!」

「……それで?」

「聖美、それ聞いて……。どうしよう? どうすればいい? あの子きっと、一人で泣いて……」

俺と聖美が付き合うかどうか……それを関口が毛の対象にしていたってことか?

意味不明の話の内容が理解できてくると、先ほどの聖美の態度にも納得する。

要が黙り込み、スッ静かに勇樹を見た。

その時、『ちぐさ』から、関口と松尾が出てきて、状況を見て息をのむ。

「は、早かったね」

関口の後ろめたい口調に、勇樹がギリッと振り返る。

「お前……聖美に何した?」

「い、や。何かって言うか……」
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