雪降る夜に教えてよ。
視線と視線がぶつかって、見透かすようで真っ直ぐなその目にドギマギする。

「さ、参加したことはないですよ。イメージです。イメージ」

「それにしては、ずいぶんと的を得た感じだ。まぁ、その手の空気感は日本はさほどひどくないと思うけど、集まる人間にもよるかな」

溜め息交じりに身を起こして、彼は肩を竦める。

「日本はひどくないですか?」

「それこそなんの集まりか……にもよる。主催側にもよるし、ニューヨークはそうでもないが、上流階級志向が強い国だと、まぁ、うちなんかは成り上がりものだし、つまはじきに合うか取り込もうと必死になるかのどちらかだな」

「上流階級……ですか?」

「いわゆる『王族の遠縁』だとか『この地に何代にわたって貢献している一族だ』とかかな。そういう会合は前の会社でしか体験していないけど、祖父の会社は一代で築いたものだから成り上がりだし、父の会社にしてもそれは変わらないから……まぁ、俺個人としては、そういう人たちとは進んでお近づきにはなりたくない」

苦笑する彼を眺めながら眉を寄せる。

「日本だって変わりませんよ。日本の場合は『華族の家柄』『銀行家の一族』『財界トップ』『医者の一族』と多岐に渡りますけれど」

「ああ、そう言えば……高校は“お嬢様学校”だったね」

「学校は狭いコミュニティですから。ある意味では上流階級の縮図だったのかもしれませんね」

「でも日本じゃその階級の人は滅多に“何かに参加する”ことはしないから、けっこう助かる」

そうかもしれない。
旧家とか、トップに近い人は、すでに基盤や人脈を持っているから。出歩くというよりは、待ち構えていることの方が多いな。

表舞台には立たないけれど、裏から手を回すというか……。考えて、思い出した事柄に首を振って打ち消した。

「とにかく、私は堅苦しいのは苦手です」

「いまだに俺に対して敬語のお前は、相当堅苦しいと思うのですが?」

わざとらしい敬語にぱちくりとしながら、呆れたような視線と目が合う。

「し、仕方がないじゃないですか。桐生さんの方が年上なんですから」

「かなーり距離置かれているみたいで、ちょっと落ち込むんだけど」

「む、難しい事を注文しないでください」

慌てて言う私に、桐生さんはクスッと笑って手を繋いできた。

「行こうか」

夏の気温が上昇したように感じる。

これは、季節のせいだけじゃないことを、きっと私も桐生さんも気づいていた。









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