雪降る夜に教えてよ。

海空

*****



今回の事の発端は、佳奈の楽しげな一言だった。

「せっかくの連休なのに、いつも居酒屋は面白くないよぅ」

いつも通りの週末、なんとなく集まって、早良さんいわくダブルデートをしていた時のこと。

「夏休みは取れなくてもお盆は休みなんでしょう?」

ヘルプデスクに特に夏休みはない。

ないと言うか……実際には、交代でとるようなものだから、ない事は無かったんだけれど、シス管は八月初旬まで忙しくて、結局そのままお盆に突入しそうな感じだった。

「桐生さん! お盆はお休みなんですよねぇ」

佳奈に詰め寄られて桐生さんはテーブルから身を離し、隣の私にぶつかった。

思わず顔を見合わせる。

確かに私は、休みは休みで過ごしているけど、実は桐生さんは休みも仕事をしているのを知っていた。
かなりのワーカーホリックだと思うけれど、それが彼のルーティンみたいだ。

「休みだったら、何かあるのかな?」

苦笑半分、疑問半分と言う顔で、桐生さんは首を傾げる。

「うちの叔父さんのコテージを借りられます!」

夏樹さんは困ったように笑って、私たちは互いに首を傾げた。

「それは、佳奈ちゃんと夏樹で行った方がいいんじゃないのか?」

それはもっともな話だと思う。

「私たちも、もちろん行きます!」

「なら、お邪魔するわけにもいかないし……」

彼が断りかけた時……。

「桐生さん、そんなんじゃダメダメですよぅ!」

バン!と佳奈はテーブルを叩いて立ち上がり、私をビシッと指差した。

……て、何故に私。

「こんな機会でもなきゃ、さなちゃんと旅行なんて行けませんよ!」

ある意味、とても確信を突いていたと思うんだ。

確かに私たちは二人きりになるのは車の中くらいで、ほとんど二人で出掛けることもないし。

「どうせ、さなちゃんの事だから、桐生さんを単独で部屋に招待したりとか、桐生さんの家に行くとか、全然してないんでしょう?」

大いに納得するものがあったのか、桐生さんは腕を組んで私を眺め始める。

見られても私は何も答えませんからね!

そう思ってそっぽを向いたら、彼は居ずまいを正し、きちんと座りなおして佳奈を振り向く。

「OK。じゃ日にちは……」

あ、ちょっと待って。聞かないで相談始めないで?

聞いてくれたら、ちょっとは断ろうかなーとか、思わないでもなかったんだし……?

完全に作戦は裏目に出て、サクサクと計画は進んでしまっていた。





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