雪降る夜に教えてよ。
「じゃ、俺は他の荷物取って来るから」

ウジウジしてたら、桐生さんは部屋から出ていってしまった。

そうすると、何だか色んなことが頭を過ぎる。
このままじゃ、桐生さんの優しさに甘え過ぎてしまうんじゃないだろうか。
甘えて、誰かに頼る年でもないと思う。

いつからだろう。
いつから、こんなに甘えてしまっているのだろう。
そんな事を考えているうちに桐生さんは戻って来ていた。

「ほら。そんなに考えてないで、少しは楽しめ?」

「だって……」

「これから佳奈ちゃんが、夕食作るんですぅ! って張り切ってたけど、それでいいわけ?」

そうか、もう一六時になるしね。何も食べていないからお腹も空くころかもしれない。佳奈が張り切ってご飯を……。

「それは危険です!」

ガバッと立ち上がると慌てて部屋を出て、キッチンらしい場所へと走り寄る。

桐生さんが言った通り佳奈はキッチンに立っていて、半泣きの顔で振り返った。

「さなちゃん……」

佳奈は左手の指をにぎりしめていて、そこからはポタポタと真っ赤な血が流れていて……。

やっぱりねぇ。
もう本当に不器用なんだから。
年末に肉じゃがを真っ黒にした人が、どうして料理を作ろうと張り切るのかな?

「あぁ、もう! あんたって子は。家庭科2だったことすぐに忘れる!」

目についたキッチンペーパーを手に取ると、佳奈の傷口を押さえる。

「どうしたの? 大丈夫か?」

騒ぎを聞き付けた夏樹くんがキッチンに顔を出したのを振り返った。

「清潔なタオルと消毒液。それからガーゼに包帯。早く持ってきて!」

「え、そんなこと言われても、僕このコテージ初めてで……」

「つべこべ言わずに探してきて!!」

慌てて出て行った夏樹くんと入れ違う形で桐生さんが顔を出した。一瞬で事態を察して、顔をしかめる。

「怪我した腕を心臓より高い位置にしてあげて。佳奈ちゃん、救急箱の置場は判るかい?」

「リビングですぅ」

彼は片手をあげると、すぐに入口から見えなくなった。

「さなちゃん……桐生さんて、スゴイ冷静な判断力ね」

感心するような佳奈の声音に思わず笑ってしまう。

「今更気付いたの?」

「改めて実感した感じ」

クスクスと笑い合いながら、持って来てもらった応急セットで佳奈の治療をした。

それからもちろん、佳奈にキッチン出入り禁止を言い渡して、ちょっとだけまわりを片付ける。
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