雪降る夜に教えてよ。
いつもとは“何か”が違うから混乱しているような気がする。

頭の中がぐちゃぐちゃして戸惑って。
どうしたらいいのかも、どうすればいいのかも、その答えはわからなくて……そして困る。

いつものように困ると“ソレ”を手放せばいいけれど、それもできずにグルグルと同じ場所を彷徨って、そして立ち止まってしまうのかもしれない。

「ねぇ。なんでいつも、私は手を離されちゃうのかな?」

どうしたら、手を離さずにいられるのかな。

『さなちゃん?』

「あの時……母さんがひどい咳をしていた時、誰か呼んでいればよかったかな?」

駄目だ。

『え……。何?』

「あの日、私が出掛けていなければ、恭介さんは生きていたかな?」

これ以上は駄目。だめだと思いつつも言葉は勝手にあふれて出て来る。

『恭介さんて……確か、さなちゃんの養父さん?』

「あの時、奥さんに殺されてれば、私はよかったのかな?」

壊れる。

『ちょっ……殺されてればって、なんてこと……!』

「……私が生きてなければ、桐生さんはあんな眼をしなくてすんだのかな?」

あんな困ったような眼をさせずにすんだのかな?

「もうわからない……。わからないよ佳奈」

苦しくて、切なくて、何もかもが指先からするすると零れ落ちて行ってしまうようで。

子供のころの砂遊びみたい。

一生懸命形を作ろうとして、頑張って山にしようとするけれど……。

さらさらと零れ落ちていく砂は決して思い通りにはいってくれなくて、残された小さな山を見つめて虚しくなって……。

『さなちゃん、落ち着いてよ!』

目の前の景色が歪んでうまく見えない。

涙が落ちて鳴咽に変わる。

「ねぇ、私はどこにいれば良かったの? 本当に私は生まれて来なければよかったの?」

耳に当てた受話器からは何も聞こえない。

佳奈も呆れたんだろうか?

呆れちゃうよね、こんな子供みたいな事を言って、どうしようってなるよね?

「どうやって愛せばいいの? 私の居場所はどうすれば見つかるの?」

何処にも居場所なんて見つからない。
愛し方なんて私は知らない。

「私はどうすれば……どうすれば良かったの……?」


そうして聞こえてきた小さな呟き。


『……俺の隣にいればいいと思う』


聞こえた低い声に心臓が止まった気がした。









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