雪降る夜に教えてよ。
「俺の場合は笑うけど、君は無表情。対象的だけど、やってることは同じでしょ」

瞬きをする私に、桐生さんは片眉を上げた。

「けっこう重宝するんだ。笑ってると、怒っていても泣いていても、気付かれる事は少ない」

ああ。だから何考えてるのか解らない。

彼の胡散臭い笑顔の理由が、何となく解ったような気がした。

「で、その俺なりの経験からすると、今の君は、すごく脆くなっているのが解るよ」

脆く……ということは、壊れかけているということだろうか?

「でも、あれだけ邪険にしておいて、君は根本的な質問はしてこないんだね」

「根本的……ですか?」

「聞く人は多いと思うな。“何故、自分なのか”って、基本じゃないかな?」

何故かぁ……珍しいなとは思うし、おかしな人だとは思うけれど。

「聞いても仕方ないかなって思います」

「君って、きっとすごく自分に自信がない人だよね? 今まで出会った女性だと、自信過剰かまったく普通かのどちらかだけど、君は何かが物凄く違う。まるでソレがいけないモノかの様に、その容姿を隠して生きている」

急に言われた言葉に、パリンと心の角の何かが剥がれて落ちた。

「外見が大切ですか?」

「別に? 君は俺の顔をどう思う?」

「えっ……男性にしては綺麗だな」

桐生さんは吹き出して、お腹を押さえた。

これは……笑ってる?

「や。もの凄い正直な答なんだろうね? あまり綺麗とは言われたことないけど」

「おかしいですか?」

「ちょっとね。あまり褒め言葉にならないかな。男性だと」

桐生さんは笑いを納めると、困ったように首を傾げた。

「ま、つまり、こういう顔がついてると、得することも多いけど、見落とすことも多いんじゃないかな?」

「見落とすこと?」

「うん。ちなみに秋元さんの俺の印象は? 正直に」

桐生さんの印象……。

「人当たりがよくて胡散くさくて。仕事は真面目。でも強引で意味不明?」

真っ正直に答えると、納得したような表情が浮かんだ。

「あー……。なるほど」

なるほど? 結構ひどいこと言っている気がするんだけれど、納得した?

「君の判断基準も本質ってことだなぁ。ありがたい」

まして、ありがたいの?
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