雪降る夜に教えてよ。

樹氷

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佳奈が楽しみにしていた忘年会。

広いホテルの会場には、何故か仕事帰りのはずなのに綺麗なワンピースのお局様軍団。

早く帰ったな~と思ったら、着替えてキマシタネ。

それで、囲まれる桐生さん。
固まりだすと、スッとそ知らぬふりして場所移動しているけれど、本当にご愁傷様です。なんて言うのか……お互いに必死ですねー。

うちの会社の忘年会は、例年二十二日に行われる。ちなみに会社の方針だとかで二十四も二十五も強制的に休みになる。まぁ、連休はラッキーだけど暇だ。

だからと言うか忘年会でカップルになる人達も多く、女の子たちの服装は華やか。

うちの会社は社内恋愛ご法度じゃないしね~。どちらかと言うとオープンな部類になると思うし。

「なに壁の花になってるんだよぅ、さなちゃん」

ビール片手に、やたらと軽装な佳奈に声をかけられる。

「や。壁の花って言うか、椅子の花?」

立食パーティーなので、会場脇の椅子に陣取って、さっきから料理をぱくついていたりする。

「佳奈は、なんでそんな格好なの?」

「SEもイブとクリスマス休みになったって言うから。これ終わったら、二人で温泉に行くの~。だから夏樹くんは飲まないの~」

後ろで夏樹さんが、照れながら赤くなっていた。

「いいなぁ~。温泉」

「シス管は? 休みじゃないのぅ?」

「休みだよ。でも疲れて、それどころじゃないかな」

「そんなに大変なのぅ?」

「教えらんないなぁ」

守秘義務がありますから。

とにかく、会社の仕事納めは一二月二十八日からなんだけど、それまでにセキュリティを強化しないといけなくて。

二十四と二十五に休日出勤! とも考えていたけど、ビル全体が清掃入るのだそうで、締め出しをくらいってしまっている。

つまりどんなに忙しい部署でも、半ば強引に休みがとらされるって感じ。

だから、シス管も殺人的な前倒しスケジュールでこなしていた。

これで疲れない、桐生さんは鬼だ。にこやかに談笑してるしね~。

「あー……。ほら、桐生さん他の人に連れてかれちゃってるよぅ」

「私には関係ないし?」

のほほんと呟くと、佳奈は一瞬、夏樹さんと顔を合わせて顔を近づけてくる。

「そんなこと言ってたら、また、桐生さんに怒られるよ?」
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