雪降る夜に教えてよ。

何故そんなものをかけているか謎だけど、サングラスをかける様は想像以上にモデル並だ。

「惚れた？」

からかうように小首を傾げる桐生さんを、無言で中に通す。

「招待ありがとう」

そう言って、頬っぺたにキスをするから、無言で押しやった。

「いらっしゃいませ桐生さん。まぁ、楽にしてください～」

佳奈がそう言ってソファを示す。てか、それ、私の台詞じゃなかろうか？

「あれ。そんな大きなバック持って、数日泊まり込み用意ですかぁ？」

はい？

「まさか、秋元さんはそんなこと許さないよ。コレは彼女のリクエストの品」

何か私リクエストしたかな？　彼がカチャカチャと取り出したのは、色とりどりの小瓶大瓶。そして銀色のシェイカーに、私は声を上げる。

「カクテルの……」

「そっ！　見てみたいって言っていたでしょ。悪いけど冷凍庫貸して？」

そう言って、買ってきたたらしい氷の袋を出すから受け取って冷凍庫にしまう。佳奈がワクワクと嬉しそうに桐生さんが取り出す瓶を眺めていた。

「クアントローにベィリーズ、カシスにマリブ。あ。ズブロッカですか？」

全然わかんないし。ともかく、酒と肴は揃ったので、年末お疲れ様な宴会が始まった。



「うはぁ。またババひいちまった僕」と、何故か無意味にババ抜きしたり……。

「……不気味な色だなぁ」どーしたことか、桐生さんと佳奈でカクテル作りを競ったり……。

「やだぁ！　夏樹くんに抱っこされるのぅ！」案の定、佳奈が酔って夏樹さんに絡んだり……。

そんな感じで騒いでいたら、テレビではカウントダウンが始まった。

「俺、ちょい煙草吸ってくる」

いきなりそう言って、ジャケットも着ないままベランダに出て行ってしまうから。桐生さんをびっくりして追う。

「中で吸ってくださっても大丈夫ですよ？」

すでに煙草をくわえていた桐生さんは、煙に目を細めながら部屋の中を振り向いた。

「何が悲しくて、あのいちゃいちゃ眺めてないといけないんだ？」

背後を振り返ると、酔った佳奈は、夏樹さんの膝のうえで懐いている。

うん。確かに目の毒と言うか……目が当てられないと言うか。そうだね、確かにちょっといたたまれないかもしれない。

そう思って私もベランダに出てサッシを閉めた。片眉を上げながら桐生さんは静かに煙草の煙を吐き、無言で隣に立つ私に苦笑する。