雪降る夜に教えてよ。
アピールって言われても、何をどうアピールしているのかがわかりにくいんですが。

「それは女としてどうよ?」

どうよって言われても。

「あまり意識したことが、最近なくてですね」

実はそんな感じ。聞いた瞬間に、早良さんは両手で顔を覆った。

「なんで秋元ちゃんを選んだんだろう。災難だ。桐生マネ」

平凡に過ごしたかった私は災難じゃないのかな?

ご飯を食べ終えてご馳走様と手を合わせる。
とにかく、早良さんとの昼食は楽でいい。
勝手に私の顔色で会話を続けてくれるから、あまり話さなくてもOKだったり。

「さ。時間はあるから、コンビニ付き合いなさい」

こういうところは、ちょっぴり強引で困っちゃうんだけどね。

「にしても外は暑いわね。春が恋しいわ」

早くも来年の事を考え始めている早良さんに苦笑する。

そういえば、桐生さんはやっぱりお昼抜きにするつもりかな~。
するつもりだろうな。強制はできないんだけど、いつも夜遅くまで残ることが多いシス管だし。

目についたところでカゴを持つと、牛乳とあんパン、メロンパン、それから悩んでイチゴポッキーとミルクチョコレートを買った。

「あんた、ランチ食べたのにお腹空いてたの?」

や。これは桐生さんの分。って、内容的にあまり言わない方がいいかも知れない。

実はかなりの甘党らしい。
バレンタインの時も、山積みのチョコを残業中にバリバリ食べてたし、お酒の席でも必ずデザートを喜んで食べてるし。

オーダーメイドのスーツをビシッと着こなす、長身美形な姿からは、ちょっと想像し難い。

「ま。残業あるかもですから」

「ふーん?」

まったく信用してない口調に、私も小首を傾げてとぼけてみせた。

「あんたも解りやすいね。そのポーカーフェイスを、普段も保ちなさい」

言われている意味がいまいち解らない。

とにかくオフィスに戻ると、画面と睨めっこしていた桐生さんに袋を差し出した。

「どうぞ」

「え。僕に?」

唖然としている桐生さんに頷いて見せる。

「お腹空かせてたらいけませんから」

「……ありがとう、お母さん」

「私が生まれる前に、マネージャーを産むことなんて出来ませんよ」

「ま。それはそうだね。有り難くいただく」

そう言いながら、モニターに視線を移す。青い画面になっていたからメールかな。
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