雪降る夜に教えてよ。
第三章

群青

*****



私、死ぬかもしれない。

十六時のオフィスは地獄のような暑さに見舞われていた。

なんの事はない、要は単なるエアコンの故障なんだけれど。

合わせて六十台以上のパソコンを扱うオフィス内は、機密保持の為に……本当にそれが実際の理由かは知らないけれど……窓がはめ込み式で開かないし、密閉された空間は風もなく、西日が差す頃には、まさに蒸し風呂状態。

男性社員はジャケットを脱いで腕まくり。中にはシャツの前を全開にしてる人もいる。

女子社員はそういう訳にもいかないので、それぞれ冷えピタや、もらいものに入っていた保冷剤などで対応していた。

それにしても暑い。

「直りそうか?」

桐生さんが、ちょっと見に来てくれた機械工学部の人に話かけている。

いつもはビシッとスーツを着こなしている彼だけど、さすがに今はネクタイを外して腕まくり、プラス、ボタンをいくつか開けている。

「いやぁ。これは業者に来てもらった方がいいと思います。ここの所とここを連結する部品が切れてるし、僕じゃ……」

「だ、そうですが、いかがしましょう?」

桐生さんは、汗びっしょりで溜め息をついている杉本室長を振り返る。

外部の人間を呼ぶと言うことは、必然的に仕事をストップしなくてはならないけど。

「この分だと、普通に仕事も無理だろう。今日は定時上がりで残業は無しにしてほしい」

無しにしてほしいと言うのは、概ねシス管に言われた言葉だろうな。ヘルプデスクで残業はあまりないから。

桐生さんは、おでこを拳で叩きながら頷いた。

「秋元さん」

呼ばれてパーテーションの陰から顔を出す。

「……はい」

「今やってる書類、終わりそうか?」

「……終わらせます」

しかないでしょう。

席に戻ると早速仕分けを始める。桐生さんも戻ってきて髪をかき上げながら席についた。

「明日に回せるのはまわしちゃって、今日できる急ぎの分だけを頼む」

「はい」

書類を分けると、明日に回せる分をキャビネットに戻して、ちょっとかすむ目を擦りつつ、残りの仕事に取り掛かった。

「急がせて悪いね。直せれば良かったんだけど」
< 98 / 162 >

この作品をシェア

pagetop