ウサギとカメの物語 番外編


当然、この流れは中断…………と、思っていたのに。
順はそうじゃなかった。


私の耳元で謝ってきた。


「ごめん、奈々。俺、たぶん今日我慢できない。大野に頼んでくる」


え、何を?
コズに何をどう頼むのか心配になった。


そうしたら、順はもそもそ立ち上がって引き戸の向こうにいるであろうコズと話すために戸を開いた。
どうやら鍵を渡している模様。


なるほど、もしよかったら今夜は俺の部屋を使ってください的なことね。
それはコズもしっかり察したらしい。
ボストンバッグ片手に「ごゆっくり〜」なんてニヤつきながら行ってくれた。


コズがいなくなって、順はすぐさま続きを再開。
組んず解れつ、布団の中で思う存分イチャイチャした。


順が想像以上に夜は積極的ということが分かった日でもあった。
その裏の顔は、もちろん私の中では「有り」。
好きな人と抱き合って触れ合うのは、私も嫌いじゃないしむしろ好き。
心も体も、相性抜群だったのだ。






ことを終えて、幸せいっぱいの気持ちで順の温もりを抱きしめながら眠ろうとした時、重大なことを思い出した。


「ね、順……。順って一人部屋?」

「え?………………………………………………あ」


エッチすることだけを考えていた私たちの、大きな大きな恐ろしいミス。
あんぐりと口を開けた順が、ポリポリ頭をかきながら苦笑いした。


「ヤバッ……、柊平と二人部屋だった…………」

「ちょ、ちょ、ちょっと〜!てことは、コズと須和が一緒にいるの!?大変!!コズが襲われる〜!!」

「だ、大丈夫だって…………たぶん。ほら、柊平って性欲無さそうだろ?」

「………………………………………………確かに」


かなり失礼なことに、須和には性欲は無いという順の発言に妙に納得して、私たちは何故か安心して眠りについた。
コズと須和がゆっくりと距離を縮めることになったキッカケを作ったということも知らずに。
彼らがのちに付き合い始めるということも知らずに。









これが、私と彼氏・田嶋順との馴れ初めなんです。









< 12 / 174 >

この作品をシェア

pagetop