めぐり逢えたのに
「恋人ねぇ……。」

いっぺんにいろんな話をきいたので、すぐに返事ができるわけでもなく、私は無言になった。とは言え、頭の中では、この状況をどう使うのが一番いいのか計算してもいた。

「だけど、さすがに、家に帰って来てベッドにいるあなたたちと鉢合わせなんていうのは、私も嫌よ。」

「確かに。」

「だったら、マンション別に用意してもらえる?」

「何とか考えてみるよ。」

「それに、私の方も最低限の生活費がかかるじゃない。それはどうするの?」

「それはオレが持つよ。君の方は何を持ってくるか聞いてる?」

「うーん。カードはそのまま持ってていいみたいだけど、他は特に。とりあえず持参金だけじゃないの。不動産とか分けてもらう話は聞いてないよ。それに、こう言っちゃあナンだけど、家の父は結構ケチよ。そっちは?」

「親父がマンション用意するっていってるけど。ほら、お袋に頼めばいい物件出してもらえるだろうから。」

「ああ、松方不動産なんだ、お母さん。じゃあさ、タワマンの手頃なのを隣り合わせで用意してもらえない?なかにドアつけて、行ったり来たりできるようにしたらどう?」

実は、これは私が一番いい方法じゃないかと秘かに考えていた結論だった。佐々倉と毎日顔を突き合わせるなんて憂鬱だし、かといって、離れていると世間を欺くのが難しくなる。


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