めぐり逢えたのに
「確かに、」

私は顔をあげて、佐々倉の顔をまっすぐ見た。

「父に逆らうのは難しいというのは正しいかもしれない。」
「かもしれない、じゃないだろ。疑問の余地はないように思えるけど、僕には。」

佐々倉はひどく真剣な顔だった。

「だから、僕たちが好きなことをしたいと思うのならば、二人で協力するのが一番だと思うんだ。単独じゃとてもじゃないけど太刀打ちできない。」
 
「それで偽装結婚。」

「そう。取りあえず、体裁を整えておけば彼らは文句は言わない。戸川のおじさんが欲しいのは、いざという時泣きつける政治家を自分の味方にしておくことだ。うちの親父は有形無形の援助を期待できる親戚が欲しい。そこさえ押さえておけば、彼らは僕たちが好き勝手なことをやっても目をつぶると思う。」

「…………」

「さっきも言ったけど、僕には恋人がいるんだ。彼女と別れたくない。彼女を認めて欲しい。」

さっきまでのおちゃらけた調子とは打って変わって、佐々倉の表情は真剣そのものだった。



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