めぐり逢えたのに
結婚式は、それはそれは華やかで盛大なものだった。
招待客は六百人以上いたんじゃないだろうか。ホテルで挙げるオーソドックスな結婚式は、私たちの両親の満足のいくものだったようだ。

当たり前だ。

私が唯一口出しをしたことと言えば、お色直しはしない、の一点だけだ。

それ以外は全て、母の好きなようにさせた。
ウエディングドレスでさえ、母に選ばせて、私は寸法を測りに一度店に足を運んだだけだった。
コーディネーターとの打ち合わせさえ出席せず、全部母に任せた。
感謝の手紙とか、花束贈呈とかその類いのこともコーディネーターの人に適当にライターを用意してもらって、私の履歴書を見て書いてもらうようにお願いした。

そんな風だったから、当日も自分の結婚式を執り行っているという気は全然せず、ただ言われるがままにするべきことを黙々こなしていただけだった。

隣りの佐々倉も淡々とした表情で、その下で何を考えているのか、私にもわからなかった。


ああ、誓いのキスがやけにあっさりしたもので、それは人前のキスだったからなのか、彼の性格ゆえなのか、それとも私とのキスだからなのか、ちょっと考えたのが、結婚式で一番印象に残っていることだ。



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