めぐり逢えたのに
「今日のお客さんはまた、強敵だったでしょう。」
「鈴木さん?」
「そう、鈴木さん。実はね、鈴木さんて、一年ぐらい前にクレームの電話をしてきたんですよ。その時に担当したのが当時の岩田係長だったんですけど、対応がまずくてね……、鈴木さん、モウレツに怒っちゃったんですよ。その時から、クレーマーに大変身。もう、ちょっとしたことで言いがかりをつけてうるさいのなんのって……。」

そんな話は聞かされてなかった。美穂はいたずらっぽく佐々倉を見て笑う。

「ね、室長。たまには部下と飲みに行った方がいいですよ?」

佐々倉が何かと美穂と頼りにするようになったのはそれからだ。
部署内で一番経験のある美穂は、顧客とのやり取りや経緯を誰よりも詳しく知っており、彼女に聞けば間違いはなかった。

「あたしが、室長のこと、影でフォローしてるの、わかってます?」
「いつも感謝してますよ。」
「じゃあ、たまには食事にでも連れて行って下さいよ〜。室長は素敵なお店をたくさん知ってるって、もっぱらの評判ですよ。」

唐沢美穂は存外に押しが強い。
何と言っても、美穂の機嫌を損ねると仕事がやりづらくなる。佐々倉はちょくちょくと美穂につきあわされるはめになった。



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