きみと、春が降るこの場所で
「ずっと、って、どんくらいなんだよ」
声は情けないほど震えていた。
怖かったんだ。震える手に爪を食い込ませたけれど、隠しきれてはいない。
「息が止まるまで」
死ぬまで、と言わなかったのは、俺のためか。それとも、詞織自身のためか。
わからないけれど、そんな事、黙って聞いていられるわけがない。
「そんな顔しないで、朔。こわいよ」
握り締めた拳をほぐすように、詞織の手が俺の指を1本1本摩る。
「泣いていいよって前に言ったけど、わたしの事で泣かせるのは、いやだな」
「泣いてねえよ」
「うん。でも、泣きそうだよ」
泣かねえよ。詞織が泣かないのに、俺が泣いてどうする。
不用意に触れるのを躊躇って、けれど何かしてやらないととでも思ったのか、詞織が俺の肩にブランケットをかける。
その上から、ぎゅっと抱き締められた。
「朔、大丈夫だよ、大丈夫」
「なにが」
「全部、あげるからね」
一瞬、何の事か理解出来なくて、でもすぐに思い出した。
この後に及んでまだ自分の事ではなく、俺の心配をしているのだと。
そういえば、彰さんには何度も伝えたけれど、詞織には言った事がない。
「俺も、詞織のそばにいるからな」
「…うん。なら、さみしくないや」
ブランケットを捲り上げて、詞織の背中に腕を回す。
抱きしめ合っている間、詞織の顔がくっついている肩のあたりが、じわりと濡れていた。