きみと、春が降るこの場所で


詞織の横に寝転んで、ひとつ欠伸を漏らす。


寝たら怒るんだろうな、多分。


知らないやつが寝ていたって別に何とも思わないのに、親しい人の寝顔を見るとなぜか眠くなる。


落ち着くのか、緊張が解れるのか、同じ事だけれどどちらも納得できる。


コツンと額を合わせて、至近距離で詞織の顔を見る。

起きている時には絶対に出来ない事だ。

離れてって怒るから。


段々と眠気が押し寄せてくる。引く事を知らない波のように。


「…おやすみ」


詞織の頬にかかる髪を指先でよけて、重い瞼を閉じた。


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