小夜啼鳥が愛を詠う
後部座席から前へ首を伸ばすと、レンガ造りの一連の建物の間にそこだけが瓦の乗った白い塀。
そして、桜!
まだ開花宣言も出ていないのに、満開!
すご~~~い!
今日なんか、寒の戻りでけっこう寒いのに、こんなに綺麗に咲くんだ。
なるほどなあ。
窯に来た私をわざわざ車で1時間以上かけて連れてきてくれるわけだわ。
それに今の時期にこんなにも満開じゃあ、私の入学式には絶対散ってしまってるはず。
ほんと、きれい……。
春秋先生と私たちを結びつけた桜。
あの日……チャリティー美術展で私がもっとも惹かれた作品は、春秋先生のリトグラフ。
後日、春秋先生がプレゼントしてくださり、今もなお私の部屋に飾ってある、あの桜。
なるほど……これがそうなんだ……。
1本だけ、白く気高く咲き誇っていて、すごく素敵。
花曇りのどんよりした空も、この桜の周囲だけ浄化されてそう。
「孤高の美ですね。」
ため息まじりにそうつぶやいた。
「……うん。実物を見て納得した。白黒のリトグラフこそがふさわしい……。センスありますね。おみそれしました、春秋先生。」
野木さんの感嘆は、桜の美ではなく、この桜をリトグラフ昨品にした春秋先生が対象らしい。
「お。野木ちゃんが俺を褒めてくれるって、珍しいやん。」
春秋先生は冗談っぽくそう言ったけど、うれしそうだった。
「夜も綺麗でしょうね。」
心持ちゆっくり車を走らせてくれている春秋先生にそう言った。
春秋先生は、ちょっと笑った。
「……綺麗だよ。でも夜は神聖すぎて、俺の手に余るってゆーか。……野木ちゃん、チャレンジしてみたら?」
「え!……あのリトグラフを超えられる気がしない……。」
野木さんにしては気弱な言葉だった。
「別に超える超えないって問題ちゃうやん。それにあれは俺にとっても特別。」
特別……?
「恋の思い出でもあるんですか?」
そう尋ねたら、春秋先生は
「ま、そんな感じ?……俺じゃないけどね。」
と、ごまかした。
ふ~ん。
あ、そうだ。
「私の母は、あのリトグラフを観てこの木だとわかったようでした。もしかしたら、母にとっても特別な木かもしれません。」
そして、桜!
まだ開花宣言も出ていないのに、満開!
すご~~~い!
今日なんか、寒の戻りでけっこう寒いのに、こんなに綺麗に咲くんだ。
なるほどなあ。
窯に来た私をわざわざ車で1時間以上かけて連れてきてくれるわけだわ。
それに今の時期にこんなにも満開じゃあ、私の入学式には絶対散ってしまってるはず。
ほんと、きれい……。
春秋先生と私たちを結びつけた桜。
あの日……チャリティー美術展で私がもっとも惹かれた作品は、春秋先生のリトグラフ。
後日、春秋先生がプレゼントしてくださり、今もなお私の部屋に飾ってある、あの桜。
なるほど……これがそうなんだ……。
1本だけ、白く気高く咲き誇っていて、すごく素敵。
花曇りのどんよりした空も、この桜の周囲だけ浄化されてそう。
「孤高の美ですね。」
ため息まじりにそうつぶやいた。
「……うん。実物を見て納得した。白黒のリトグラフこそがふさわしい……。センスありますね。おみそれしました、春秋先生。」
野木さんの感嘆は、桜の美ではなく、この桜をリトグラフ昨品にした春秋先生が対象らしい。
「お。野木ちゃんが俺を褒めてくれるって、珍しいやん。」
春秋先生は冗談っぽくそう言ったけど、うれしそうだった。
「夜も綺麗でしょうね。」
心持ちゆっくり車を走らせてくれている春秋先生にそう言った。
春秋先生は、ちょっと笑った。
「……綺麗だよ。でも夜は神聖すぎて、俺の手に余るってゆーか。……野木ちゃん、チャレンジしてみたら?」
「え!……あのリトグラフを超えられる気がしない……。」
野木さんにしては気弱な言葉だった。
「別に超える超えないって問題ちゃうやん。それにあれは俺にとっても特別。」
特別……?
「恋の思い出でもあるんですか?」
そう尋ねたら、春秋先生は
「ま、そんな感じ?……俺じゃないけどね。」
と、ごまかした。
ふ~ん。
あ、そうだ。
「私の母は、あのリトグラフを観てこの木だとわかったようでした。もしかしたら、母にとっても特別な木かもしれません。」