【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「今日は本当にありがとうございました」

運転席の窓から顔を出している雪ちゃんにお辞儀をした。

「どういたしまして。楽しかったわね」

「はい……」

私はイルカのぬいぐるみをギュッと抱き締める。なんだろう。雪ちゃんと離れたくないな。

「……じゃあ、また明日会社でね」

「はい……おやすみなさい」

「おやすみ」

ウィーンと窓が閉まり、手を振って雪ちゃんは行ってしまった。私は車が見えなくなるまでその場に立ちつくす。

「はぁ……急に寂しい……」

抱き締めたイルカに顔を埋める。

「…………よしっ!」

お風呂に入ってさっさと寝てしまおう!

まだ8時を過ぎた位だけど、早く明日になったら良い。

「一緒に寝ようね」

イルカに声を掛け、部屋ヘ戻ろうと階段を登った。


――キラッ!


不意に、下の電柱の辺りで何かが光る。

「……?」

覗いてみるけど、何もない。

「ミラーが反射したかな?まあ、良いや。早くお風呂入ろう……」

パタン……と玄関を閉じ、鍵を閉めた。その時は気にも留めなかった。

でもこれが、この後に起こる重大な事件の幕開けだったなんて、思ってもみなかった――。
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