僕たちは呼吸をやめた。


そう思うのに

僕を"好きだ"と言ったその唇で、僕でない他の誰かに、愛の言葉を紡ぐのだろうか。

僕を抱き締めた白く柔い肌で、僕でない他の誰かに、そっと手を伸ばし、愛おしそうに触れるのだろうか。

そう考えては、
存在しないその誰かの首を絞めたくなる。


なんて、人間とは愚かなのだろうか。

幸せになってほしいと願いながら、幸せにするなんて、言えない僕は、それでも君を、決して離そうとはしないのだから。


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