涙の雨と僕の傘

それから、名瀬と少し仲良くなった。


教室で、名瀬から話しかけてくることもあれば、俺から話しかけることもある。

その内容のほとんどは、くだらないことだったり、世間話だったり。


名瀬と話すようになったせいか、これまで話しかけてこなかった女子にも声をかけられるようになって、辟易した。


女子は総じてやかましい。

話がぽんぽん変わる。

落ち着かない。


そう思うと同時に、名瀬だとなぜか大丈夫だと気づいた。

それがとても、特別だということにも。



名瀬には、俺が家族と死別していることも、さらっと話してしまった。


なぜだろう。

名瀬といると、俺が普段高く積み上げている壁が、まるで意味を成さなくなる。


俺は名瀬に、俺のことを知ってほしいと思っているんだろうか。



学費や生活費に余裕を持たせる為に、バイトをかけ持ちしていることまで話した。

すると、親のお金で色んな女と遊び歩いてるアイツに、ちょっとは見習ってほしい、なんて言われてしまった。


見習われても困る。



「そういえば、アイツに笹原とのこと聞かれたよ。お前、あの笹原と仲良いんだって?って」

「へえ?」

「もしかしてヤキモチ?とか思ってさ。仲良いって言っても、普通に話してるだけだよって答えたら、アイツ何て言ったと思う?」

「浮気じゃないだろうな、とか?」

「ブブー。正解は“ま、俺の方がかっこいいしモテるしな”でしたー。まじで殴ってやろうかと思ったわ」
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