彼女のことは俺が守る【完全版】
 海斗さんが京都のロケから帰ってきてからの生活は穏やかなものだった。時間が合えば一緒に食事をして、ソファに並んでテレビを見ながらコーヒーを飲んだり、たまには一緒にビールを飲んだりもする。海斗さんはきっとお酒に強い方だと思うのに私に合わせて飲んでくれているように思う。


「もっとビールでも持ってきましょうか?」


「そんなに気にしないでいいよ。それより里桜はまだ大丈夫?明日も仕事だけど」


「大丈夫です。海斗さんのビール持ってきましょうか?海斗さんのペースで飲んでください」


「これも俺のペースだから里桜が気にし過ぎ。それに、自分のことは自分でするからいいけど、里桜は俺に甘えて」


 自分のことは自分でするのに、私は海斗さんに甘えるなんて可笑しい。何度も自分のペースで飲んで欲しいと言ったけど、海斗さんはニッコリ笑うだけ。


『これも俺のペースだから』


 そう言われるとそれ以上は何も言えなくなる。


「それより里桜はまたここで寝るんじゃない?」


 海斗さんと一緒にいることで安心してしまう私は何度か一緒にお酒を飲みながら寝てしまったこともあるけど、朝起きると決まって自分の部屋のベッドの中にいる。朝に気まずくていると、海斗さんはいつもと変わらない様子で、私が目の前で寝ようと一切気にしてないようだった。


「寝ませんよ」


「寝ても大丈夫。俺が運ぶから」


 そう言って海斗さんはクスクス笑った。


 まるで本当の夫婦のように過ごしていたけど、海斗さんは私に必要以上に触れることはなかった。
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