彼女のことは俺が守る【完全版】
 優斗にしてみれば、自分が捨てた女がこうやって結婚式に来ることも、それに俳優である篠崎海を連れてくるなんて想像も出来なかっただろう。今の状況が上手く呑み込めてない優斗は私と海斗さんの顔を見比べるしかなかった。


「はい。里桜は俺の婚約者です」


 海斗さんは最後のトドメを刺しに来る。それはあの時、喫茶店で私を奈落の底に陥れた優斗と元友達の上を行く。海斗さんが私の左手をゆっくりと持ち上げて、優斗と元友達にピンクダイヤモンドの指輪を見せつける。
 普通の会社員には買えないような指輪の光に優斗と元友達は釘付けになり、優斗は悔しそうな顔をして、元友達は自分の左手を右手で包み、指輪を隠した。それを海斗さんは見過ごすことはしなかった。そして、最後の幕を下ろそうとする。



「今日はご挨拶に寄らせて貰いました。結婚式に参加しようと思っていましたが、里桜はちょっと用事があるので連れて帰ります。お二人で幸せになってください。里桜は俺が責任を持って幸せにします。さあ、里桜もお祝いを言わないとね。大学の先輩と高校からの友達の結婚式だろ」


 もう大学の先輩でも友達でもないけど、私はここで頑張らないといけない。


 傍に居てくれる海斗さんの瞳は強い意思を持っていて、私を見つめていた。私は誰にも謗りを受けることをしてはいない。恋は終わったけど、だからと言って、私が泣かないといけない理由なんてない。
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