彼女のことは俺が守る【完全版】
 掠れた低い声が私の耳に届く。一瞬、言葉に詰まったけど、私は自分の胸元をそっと抑えた。


『お父さん。いきなりでごめんなさい。私、好きな人が出来て、その人と結婚したいと思っている。その人は俳優の篠崎海さんで、今は一緒に住んでいる。でも、今回、一緒に住んでいることが週刊誌に記事で出ることになって、急遽籍を入れようということになったの』


『篠崎海ってあの俳優のか?』


 一気に言う私の言葉を最後まで聞いたお父さんが少しだけさっきより低い声を出した。私の言葉が余りにもいきなりで頭の中が混乱してるのかもしれない。


『うん。そうなの。お父さんも知っているでしょ』


『ああ。でも、俳優という仕事をしている篠崎海は誠実な男なのか?』


 お父さんの言っている意味は分かる。芸能界は華やかな分、その反面、影な部分もある。お父さんは海斗さんがどうというより、急な結婚と海斗さんが俳優というのを心配しているようだった。逆考えてみれば、心配しない方が可笑しいのかもしれない。


『うん。とっても誠実な人だし、優しいし、思いやりもある』


『大丈夫なのか?』


『うん。一緒に居たいと思う』


 私の素直な気持ちだった。海斗さんの傍に少しでも長く居られてたらそれで幸せだと思う。


『分かった。里桜の人生だから、自分の思うとおりにしなさい。こうやって電話をしてくるということは自分の中でもう決めたことなんだろう。親として里桜が選んだ相手なら賛成する。でも、落ち着いたらでいいから一度一緒に顔を見せに来なさい』

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