彼女のことは俺が守る【完全版】
 海斗さんは記者会見の始まる瞬間にステージの傍にいる私に気付いたのか優しく微笑む。その表情に胸がまた少しだけチクリと痛む。


 まず話し出したのは社長さんで、でも、今回の会見の核心には触れずにそれは全て海斗さんの口から言うつもりなのだろう。すぐに、社長さんは口を閉じてしまった。軽く会釈をしてから始まった海斗さんの甘いバリトンの声は今日も私の心をドキドキさせながら、ゆっくりと会見場に響かせた


「今日は忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。この度、私、篠崎海は一般女性と結婚することになりました。彼女とは結婚を前提にお付き合いをしており、一緒に住んでおります。週刊誌の報道にあるような事実はありません」


『二人の出会いは?』


 報道陣の質問に私はあの日のことを思い出した。今までの人生で一番辛く、何も信じられなくなった時に私は海斗さんと出会った。海斗さんとの出会いは衝撃的で、私にとっては現実として中々受け止めることが出来なかった。


 私の伸ばした手を掴んでくれた海斗さんと一緒の時間を過ごす度にこんなにも好きになってしまっていた。


 出会って一か月。一緒に過ごした時間も短い。海斗さんと私の生活はぎこちなさがあるけど、それでも一緒に居ると幸せと感じている。でも、まさかこんな形で結婚会見をすることになるとは思わなかった。
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