彼女のことは俺が守る【完全版】
 覚悟はしていたけど、そこには思ったよりもたくさんの人がいて、海斗さんと私の乗った車が到着すると、車は報道陣に囲まれた。逃げたいと思うほどの勢いを感じたけど、先に車から降りた高取さんによって報道陣と車の間に見えない壁を作り、そして、状況を確認してから海斗さんは私を連れて車を降りることとなった。


 眩いというのは一番の感想。一気に光ったフラッシュは目の前を真っ白にさせる。でも、それはすぐに海斗さんの身体によって守られ、私が報道陣に晒されないようにと動いてくれた。


「里桜。大丈夫」


 私にだけ囁く言葉が少しだけ力をくれる。


「大丈夫です」


 フラッシュの眩さを抜けると、夜の区役所はとっても静かで、夜間窓口の方に向かう。そこには一人の男の人が座っていた。


「婚姻届を提出したいのですが」


 夜間の窓口での婚姻届はあっさりとしたものだった。書き漏れがないかとサラリと確認して、もしも不備があれば連絡しますが、無ければ、このまま受理されるということだった。時間にして数分。淡々と終わってしまった。


 これで私は海斗さんの戸籍上は妻となった。


「おめでとう。里桜ちゃん。篠崎くん」


「海。里桜さんを大事にするんだぞ」


 そう一番に言ってくれたのは雅さんで、その横で高取さんも穏やかに微笑んでいた。そんな二人を見ながら、少しだけ自分が結婚したということを実感する。海斗さんのこれからの仕事を守るための結婚と二人は知っているのに、極々普通にお祝いの言葉をくれる。それがとっても嬉しかった。
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