彼女のことは俺が守る【完全版】
「里桜。ごめんな」


「海斗さん。そんな風に言わないでください。私が自分で決めたことです。籍も入れて貰って大丈夫です」


「後ろ。来てますね。想定内とはいえ、もう少し気を使って欲しいものとは思います」


 高取さんの言葉にバックミラー越しに後ろを見ると、どう見てもずっと同じ車は追いかけてくる。あの車の中にいるのはさっきの会見場に居た記者の一人なのかもしれない。これから婚姻届を提出に行くというのに、何かに追われているような気がしてならないし、少し怖いと思う。でも、これが海斗さんの世界なのだろう。


「これで緊張するなって言う方が無理だよな」


「緊張もですが、怖いと少し思います」


 海斗さんもバックミラー越しに後方の車を見ると軽く息を吐いた。


「俺はよくあることだけど、里桜にとっては怖いよな。嫌になったりしてないか?」


「嫌になったりはしません」



「海、里桜さん。そろそろ区役所に着きます。多分、報道陣が居ると思いますが、社長のあの発言があるので、里桜さんの素性が晒されることはないと思いますが、里桜さんは海の左側を歩いてください。その方が安全です。私も藤堂さんも一緒に行くので安心してください」


 区役所に着いたのはそれから間もなくしてからだった。
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