彼女のことは俺が守る【完全版】
 驚きすぎて自分が目を見開いてしまったのが分かった。


 篠崎海は今の私と優斗たちとの会話の流れを聞いていて、『ギャフンと言わせないか?』と言ってきたまでは分かる。でも、今の会話の流れでどうして『俺の奥さんにならない?』なんて、そんなことを言い出すのかわからない。俺の奥さんってことはプロポーズ?


 今の私には笑えない冗談だった。


 もしも、プロポーズで、私にそんなことを言ったなら正気の沙汰じゃない。冗談を言うにしても、もう少し私の気持ちも考えて欲しい。今、優斗のフラれたばかりで自分を保つのだけで精一杯なのに酷いと思った。


 さっきの優斗と友達の結婚宣言もあり得ないけど、若手実力派俳優の篠崎海が一般人の私にプロポーズなんてそれこそありえない。色々なことが急に私に押し寄せてきて気持ちの揺れについて行けない。今度こそ本当にこの場で倒れそうと思った。


 驚きの余り、さっきの嫌な手の震えは止まったけど、今度はジェットコースターに乗ったかのように私の心は大きく旋回しながら揺れていく。そのスピードについて行けるほど今の私は強くない。ちょっと押されれば倒れるだろうし、ちょっと揺らされれば泣いてしまいそうだった。脆い私の心を弄ばないで欲しい。


 そっとしておいてほしい。



「からかわないで」


「俺と結婚しよう。本気でそう思っている」

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