彼女のことは俺が守る【完全版】
 いつも食事が終わって自分の席に戻る前には電源を切っておくようにしているのに、今日に限ってすっかり忘れてしまっていた。


 時間を見ると既に午後からの始業時間が近づいていて、このまま、電源を切るか、それとも営業室に入るのを少し遅らせて携帯電話を見るかで悩んだ。この時間はきっとどこかの会社から送られるダイレクトメールだと思うけど、それでも『ちょっとだけ』と思い、その場で携帯を開くとそれはダイレクトメールではなく思ってもみなかった人からのメールだった。


 最初に思ったのは『どうしたんだろう』ということ。

 そして、次に思ったのが『嬉しい』ということ。


 大好きな人からのメールに顔を綻ばせない女の子は居ないと思う。私もその女の子の一人だった。画面にある名前は…優斗という文字。私の一番大事な人からのメールだった。


 優斗は私が大学の時からの彼で付き合い始めてもう三年にもなる。普通の女の子なら恋人からのメールで驚いたりしないと思うけど、私が驚いたのには理由がある。それは優斗がメールを嫌っていたからだった。優斗のメール嫌いは筋金入りで連絡は直接電話を掛けてくることが多い。そんな優斗がメールを送ってきたというだけでも珍しいし私にとっては驚くべきことだった。そして、その内容を見て更に驚いた。


『仕事を終わらせてからでいいから、駅前の喫茶店で会えるか?大事な話がある。俺は五時半くらいには行っているから、里桜は仕事が終わってからでいいから来てほしい。里桜が来るまで待っているから』

< 3 / 188 >

この作品をシェア

pagetop