彼女のことは俺が守る【完全版】
「凄い」

「ほら、里桜。行くよ」

「はい」


 その一台のエレベーターに入ってから篠崎海は最上階である十一階のボタンを押すと、ドアが閉まり、私の身体は浮遊感に包まれる。そして、そのドアが開くと同時に篠崎さんは私の方を見て少しだけ真面目な顔をする。


「本当にいい?」


 そう言ったのは理由があった。エレベーターを降りた先にはドアがあり、そこが篠崎海の部屋だったから、部屋に入る前に篠崎海は私に確認を取る。この人はとっても優しい人なのかもしれない。猶予はくれなかったのに、こんな風に私の気持ちを優先してくれる。


「私がお邪魔してもいいのですか?」


「いいと思うから連れてきたんだよ」


「ありがとうございます」


 そんな私の言葉に篠崎さんはふわっと優しく微笑んだ。そして、カードキーを差し込むとドアを開けたのだった。ドアが開いたと同時に眩い光に包まれ、部屋の中が目に入ってくる。廊下の向こうに部屋があるのは分かるけど、廊下といい、玄関といい、広すぎる。


「ようこそ。里桜。歓迎するよ。急だから、今日はゲストルームのベッドで我慢してくれるかな。で、明日にでも里桜のベッドを買いに行こうな」


「わざわざベッドを買うのは勿体ないと思います」


 一緒にいるのは短い期間のような気がする。偽装結婚とか言っていたけど、私と長い間偽装結婚するほど篠崎海は相手に困ってないと思う。
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