彼女のことは俺が守る【完全版】
「利点か…俺は今の仕事が好きなんだ。昨日も言ったけど、俺にはファンがいてくれる。そのファンも熱烈なのが多すぎて、この頃は仕事にも支障をきたしている。事務所からも余りにも過熱度が凄いから、それを回避するために恋人を作れとまで言われたけど、正直、そんな時間はない」


 彼は自嘲的な微笑みを浮かべる。その表情に嘘はなかった。私が思う以上に篠崎海にも事情があるのかもしれない。芸能界というのは大変なのだろう。そんな中で自分の仕事を守りたいという気持ちもわからないではない。


「俺は仕事に没頭したい。里桜に会った時に助けてやりたいと思ったし、里桜なら結婚してもいいと思った」


 篠崎海の穏やかなバリトンの声が静かにリビングに響く。仕事が好きなもの。私を助けてやりたいと思ったのも本当だと思えた。『勘』とかいうよりは納得のできる答えで私は胸の奥で何かがストンと落ちたような気がした。


「里桜の会社が終わったら連絡しろ。それとアパートに帰る必要はないからな」


 さっきまでの優しく穏やかな声とは違う男の人の力強い声が私の耳に届く。そして、私の目の前に差し出されたのはこのマンションの部屋のカードキーだった。



「ここで俺が帰ってくるのを待ってろ」


 ここで私が篠崎海を待つ?帰って来るのを待つ?


「え?」


「俺を待ってろ」


 篠崎海の真剣な眼差しと強く思いを込めた声に私は頷いていた。
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