彼女のことは俺が守る【完全版】
　私が大学を卒業して就職したのは海外の商品を多く取り扱う商社でその経理課に配属された。


　経理課というのは三月の決算をしてからが忙しく、新年度になってから夏までの時期が特に忙しい。例年ならもう決算報告まで終わってもいいのだけど今年は思ったよりも時間が掛かっていた。ベテランの先輩の産休と急な配置換えで経理課はパニック状態だった。少しでも追いつけるように必死で仕事をしていた私が退社するのは真っ暗な中で、本当なら今日もこんな時間に退社出来るはずはなかった。


　私がこんな茜色の空を見れる時間に帰れるのには理由があって、それは会社のサーバーがシステムダウンしたからだった。システム部の社員を血相を変えてから作業に掛かっているけど普及には時間が掛かり、今日、明日は仕事にならないのでないかと言われている。


　経理課はシステムが繋がらないと仕事にならない。だからシステムダウンしてしまったからには強制的に仕事が終わるのは仕方ないことだった。それはいつもならどうしようと思う事だったけど、今日の私は運がいいと思った。


　久しぶりに優斗からのお誘いのメールに応えるために私は約束の場所に急ぐことにしたのだった。


　化粧も綺麗にし直し、今日、たまたま着ていた服はお気に入りのワンピースだったから久しぶりに優斗が私を見たら可愛いと思ってくれるかもしれないと顔が緩む。


　そして、今日はもしかしたら優斗からの素敵な『言葉』が貰えるかもしれないと思うと次第に足が軽やかになる。喫茶店への道のりは足取りも軽く私は優斗に会いたい一心で約束の場所に急いだのだった。

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