彼女のことは俺が守る【完全版】
 仕事が忙しいからというのは言い訳にしかならないけど、私から連絡も取っていなかった。電話をしても『今から寝る』とかそんなのばかり。私が忙しいのも優斗が忙しいのもお互い様と言い訳をしてしまっていた。優斗は私が仕事に一生懸命な姿が好きだと言ってくれていたから、私はその言葉に甘えていた。


 擦れ違いばかりでここ一か月くらいはまともに会ってなかったかもしれない。そんな優斗からのメールに私は…。


 期待した。そう期待してしまった。



『大事な話』の内容に期待した私は自分の左手の薬指を見る。


 付き合って三年、結婚を望んでも可笑しくない。お互いに忙しいのだから、それなら帰る場所を一緒にすればいい。そうしたら、もっと優斗との時間を作ることが出来る。そんなことを考える私がいる。


 藤森里桜(フジモリリオ)。24歳。


 会社に入って三年目はベテランの域にはまだ達することは到底できず、必死に仕事をしてもまだスキルが足りないと思うばかりだった。膨大な量の仕事をこなすにはスキル不足は否めない状況なのに、加えて同じ課の先輩社員の産休による人員不足が身の上に降りかかってきている。私ともう一人の先輩とが必死に頑張るしかない状況な私にとって優斗の存在は心の支えでもあった。

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