彼女のことは俺が守る【完全版】
 篠崎海はスーツではなく普段着だった。仕事があると言っていたから、一度、マンションに帰ってきて、それから私を迎えに来てくれたのだと思う。でも、目の前を歩く篠崎海は買い物に行くと言いながら、私を乗せた車はマンションに帰ってきて、駐車場で降りたかと思うと、今度はマンションの部屋の方に向かう場所には行かず、別の方向に歩き出す。

 どこに行くのだろうか?と思った。


「どこに行くのですか?」


「どこに行くって…。さっき、里桜の買い物に行くって言っただろ。買い物に自分の車では行かないよ。さっきは里桜を会社まで迎えに行っただけだよ」


「ありがとうございます」


「俺が迎えに行きたかっただけだから気にしないでいい」


 歩いて少しの距離なのに態々迎えに来てくれたという篠崎海の優しさにドキドキしながらも申し訳ない気持ちにもなる。そして、嬉しかったというのも本音だった。


 木曜日からの私の心は砕け散ったままだったのに、篠崎海のさりげない優しさで少しだけど癒され始めている。誰かが傍にいてくれるだけでも心は温かくなるのに、篠崎海は極上の温もりをくれる。こんなにも大事にしてくれるということを喜ばない女の子は居ないだろう。


 もちろん私も例外ではなかった。


「タクシーで行くのですか?」


「いや、俺のマネージャーの運転する車で行く。俺にとっては大事な人だから里桜にも紹介しておきたい」

 

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