彼女のことは俺が守る【完全版】
 マネージャーという言葉を聞いて、篠崎海が芸能人だったのを思い出した。忘れていたわけではないけど、あまりにも自然に接してくるので、芸能人という壁を感じさせてなかった。


 マンションのエントランスを抜け、玄関から外に出ると、少し離れたところに車が一台止まっている。その方向に向かって篠崎海は歩いていくのだから、あれはマネージャーの乗っている車なのだろう。篠崎海のマネージャーはどんな人なのだろう。怖い人でなければいいと思う。


「待たせたな」


 そんな言葉と共に篠崎海は後部座席を開けると、私に先に車に乗るようにと促す。言われるがままに車に乗り込むと、フワッと爽やかなミント系の香りが私を包んだ。見た目は普通の車なのに、中は革張りの豪勢な造りになっていて、これが『俳優篠崎海』の置かれた立場なのだろう。


 緊張している私の横に乗り込んできた篠崎海は静かに声を響かせた。

「高取」


 篠崎海の彼を呼ぶ声の優しさにドキッとした。その声には親愛の情を感じさせるくらいに優しかった。篠崎海が言うとおり本当に大事な人なのだろうと思った。


 高取と呼ばれた男の人は運転席から後ろを向き、私の方を見つめると涼やかな目元に優しそうな微笑みを浮かべていた。銀色の眼鏡が少しだけ冷たい印象を持たせるけど、でも、その眼鏡の奥にある、切れ長の瞳は優しかった。怖いとは思わなかった。


「話していた里桜だよ」


「勿論、存じております。里桜さん。初めまして、高取慎哉と申します。篠崎海のチーフマネージャーをしております。」
 

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