彼女のことは俺が守る【完全版】
「私が篠崎くんに依頼されたのは里桜さんの洋服その他諸々です。さすがにそこまで篠崎くんは付いていくのは出来ないので私に頼んできたのだと思いますよ」


 洋服…。私が篠崎海のマンションに持ち込んだのは最小限必要なものだけだった。


 仕事に行く時に必要なものと下着類くらいで、気持ちが落ち着いたら、自分のマンションに帰るつもりだったから、どうしようかとさえ思う。わざわざ買って貰う必要があるとは思えない。


 ピンクダイヤモンドのエンゲージリングに、生活するのに必要な家具の数々。それだけでもどうしようかと思うのに、この上、服やその他諸々となるとどうしたらいいのだろう。


「あの、藤堂さん」


「出来れば雅って呼んで欲しいわ。ずっとフランスにいたから姓で呼ばれるのは慣れてないの。私も里桜ちゃんと呼んでいいかしら?」


「はい。雅さん」


「うん。嬉しいわ。じゃ、行きましょうか。里桜ちゃんに似合う服が見つかる様にしないとね」


 そう言って張り切っている雅さんを前に『洋服はいらない』なんて私には言えなかった。でも、やっぱり、最初に『洋服はいらない』と言っておくべきだった。


 雅さんは私をタクシーに乗せて連れて行ったのはセレクトショップだった。そして、店の中を凄い勢いで雅さんは服を探していく。そして、雅さんのお眼鏡に叶った服は私に試着してくるように言うのだった。
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