彼女のことは俺が守る【完全版】
　そのどれもが私が着たことのない雰囲気の服だったけど、どれもが肌触りが良くシンプルなラインが綺麗で、上質だけど、決して華美ではなかった。少し背伸びしたような服ではあったけど、自分に良く似合うと鏡の中の自分を見て思う。


　雅さんは私が思う以上に優秀なスタイリストなのだろうと分かる。雅さんはセレクトショップを何軒か周り、私が思っていたよりも大量の服と下着を買い込んでいく。クローゼットがいっぱいになるのは間違いない。


　似合うと思ったのは私がどうこう言う前に雅さんはどんどん買っていく。そして、時間指定で篠崎さんのマンションに届くように手配をしていくのだった。そんな手際の良さに私は何も言えなかった。


「里桜ちゃんの部屋のクローゼットを今度見せて貰ってから、残りは今度買いましょうね。で、これからが一番のメインなのよ」


「え？」


「結婚式に出るならドレスを選ばないと」


　私は一か月後の優斗と友達の結婚式のことを忘れていた。あの結婚式の為に私は篠崎海の手を取ったもののようなものなのに、私は篠崎海の優しさにそのことも忘れていた。


「さ、ここよ。私はここの服がいいと思うわ」


　そう言って雅さんが私を連れてきたのは結婚式のお呼ばれした時に着るようなドレスの並ぶ店だった。と言っても、一般的な店ではなく、誰もが知るブランドの店だった。


　その店の前に行くだけで私は足が震えていた。

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