彼女のことは俺が守る【完全版】
 海斗さんは部屋の壁に掛かっている時計を見てから残念そうな表情を見せた。そんな海斗さんの視線に引かれるように視線を移すと、海斗さんが見ているのと同じ時計を見てしまった。


 時間は私が思う以上に過ぎていて、夜の十一時を過ぎている。私もそろそろ寝ないと明日の仕事に障るだろう。私の仕事もだけど、海斗さんは京都でロケになるのだから、私よりももっと早いかもしれない。


「悪いけど、里桜より先にシャワー浴びていいかな」


「あ…はい。あの、明日は何時に出るのですか」


「朝の五時に高取が迎えに来ることになっている。あ、それと、明後日の月曜日だけど、雅さんと一緒に里桜が住んでいたマンションまで行って引っ越しをしておいで。雅さんには高取から頼んでくれているから、里桜の仕事が終わり次第連絡したらいい様にしておく」


「ありがとうございます。でも、引っ越しは一人で出来ます」


「雅さんなら安心して里桜のことを任せられる。俺が心配だから雅さんと一緒に行って欲しいと思っている。本当なら俺が付いて行きたいけど、京都ロケは外せない。高取は一緒に来て貰わないといけないし、里桜のことは信頼の置ける人に任せたい」


 海斗さんの言葉を聞きながら、マンションの家具まで処分したら私は帰るところが無くなってしまうとも思った。海斗さんは別れる時はこの部屋の家具も全部持って行っていいというけど、そういうわけにはいかない。
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