彼女のことは俺が守る【完全版】
「やっぱりきちんと淹れたコーヒーは美味しい。空港で缶コーヒーでも飲むくらいしか時間が無かったから嬉しいよ。ありがとう。里桜」


 コーヒーしか用意できなかったのに、こんな風に喜んでくれるとやっぱり嬉しい。そして、私も一緒にコーヒーを楽しんだ。と言っても私は砂糖を入れたけど…。


 優しい時間はあんまり残されてなくて、カップに入ったコーヒーを飲み終わる頃には海斗さんはもう出掛けないといけない時間になっていた。静かなダイニングに時計の針が動く音が聞こえる。すると、その静寂を破ったのは海斗さんの胸元で響く携帯が震える音だった。


 海斗さんはゆっくりと、自分の胸ポケットに入れている携帯電話を取り出すと、その画面を見て小さな溜め息を零す。きっと、高取さんからの連絡なのだろう。海斗さんが起きてから、たった十五分の時間で、出発の時間でもあった。


「行くのですか?」


「ああ、高取が迎えに来た。玄関先に車を停めて待っているから行かないと」


 そういうと、海斗さんはゆっくりと立ち上がると私に向かってニッコリと笑う。


「里桜。ご馳走様。行ってくる」


「行ってらっしゃい。気をつけてくださいね」


 海斗さんは何か言いたげな顔をして、でも、フッと視線を逸らしたかと思うと、いつもの穏やかな微笑みを浮かべ、私を見つめた。


「戸締りとかよろしく。それと、困ったことがあったら、すぐに連絡すること」

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