そんな結婚、あるワケないじゃん!
「洋平君っ!」

(えっ⁉︎ 誰⁉︎)


一瞬考えてハッとした。

隣に立ってる男を見ると、微かに顔が強張ってる。



「羽田の知り合い……?」


私の声に反応して羽田がこっちを向いた。


「ああ…昔の」


笑顔もなくそう言う。
美人は羽田のいる方へ回り込み、「元気そうね」と囁いた。


「まぁな。………お前は?」


躊躇うようなものの言い方。
いつもの羽田じゃないみたい。


「元気よ。偶然でビックリした。………彼女とお買い物?」


探るような聞き方をする。
羽田は少しだけ間を空けて、「ああ」と一言だけ返した。



「そう。じゃあ私はこれで」


またねもサヨナラも言わずに通り過ぎて行く。
その後ろ姿を見送りながら、チラリと羽田の顔を確かめた。


なんだか分からないけど不安を感じた。
きっと羽田の眼差しが彼女ばかりを見てたせいだと思う。


昔の知り合いってどんな?と聞いてもいいものだろうか。
聞いたら羽田は、なんて言って答えるのかな……。



「ーーー帰るぞ」


不意に向けられた視線に戸惑う。
いつもの表情に戻った羽田は、私の手からカートを取り上げた。


「俺が押すよ。お前、病み上がりだし」


変に気遣うから余計に疑う。

あの人って羽田のどんな知り合い?

きちんと紹介してくれないのは、何かやましい事があるから?

それとも、私には教えられない人なわけ?



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