アタシ、好きって言った?
プライベート
ナツと逢う前はドキドキが止まらない。
誰かをスキになったのも久しぶりだし、ずっとバイクと音楽にだけ夢中だった。
たくみがいなくなって、無気力なままの日々だった。
ナツは新しい太陽だった。
でも、太陽が沈むようにナツも夜にはいなくなってしまう。
「今日はナツに聞いてみよう」
そう決意していた。

何度か通った道も見慣れて、マンションの前のお店の店員も変わらず忙しそうにしていた。
「おはよ!」
サラサラした髪をキラキラさせて、マンションから降りて来たナツは変わらず笑っていた。
「今日も綺麗だね」
恥ずかしげもなくナツへ伝えると
「ありがと」とナツは笑った。

いつものホテルへ入る。
僕はナツを抱きしめキスをした。
甘くとろけるようなナツとのキス。
服を脱がせ綺麗だけど何故か痛々しく見えるナツの身体を僕は愛した。
「なんか、今日のシン君違うね。いつもよりエッチだ」
笑いながら恥ずかしそうにナツは言った。
ナツとは避妊しなかった。
ナツも求めなかったし、僕もナツがスキな証だと思っていたから妊娠したとしても覚悟はしていた。

ナツに逢ってからのことを、バンドメンバーに話していた。
「お前何してんの?騙されてんじゃね?
バンドをやりたくない気持ちは分かるけど、たくみのバイク直せよ!あいつの形見じゃん!」
「うん。」
「本当に好きなら流されないで、いろいろハッキリさせなよ!前進んだら連絡しろよ!」
たくみがいなくなって、前に進めてないのは僕だけだった。
みんな家業を継いだり、結婚したり、資格を取ったりしていた。
たくみがいなくなって、辛いのはみんな同じ。
僕だけが情けなく生きていた。
前に進もう。
ナツに逢って聞いてみよう。
そう決心していた。

「ナツ?」
ナツは変わらずTVゲームに夢中だった。
「何?」
「あのさ、何で僕と逢ってくれるの?」
・・・ナツは何も言わなかった。
「何で僕と避妊しないで寝るの?」
・・・「プライベートだから」
「えっ?」
・・・「プライベートだから!」
意味が分からなかった。
意味が分かる答えが出て、スッキリするつもりだったのに、ますます分からなくなった。
ナツのような女性をスキになるには、僕は子供過ぎたのだろうか?
ナツは僕をスキでいてくれるから逢ってくれる。
ナツは僕をスキでいてくれるから避妊も望まなかった。
僕はそう思っていた。
お互い「スキ」の言葉も「付き合おう」の確認もなく、何度ナツを抱いたんだろう。

「ねぇ、何か食べ行こ?」
ナツは変わらず笑いながらそう言って服を着た。
僕は何も言えなかった。

食事の帰り、ナツと僕は無言で歩いた。
いつもは手を繋いでいたのに、笑い声も二人の間にあったのに・・・

「周りから見たらアタシ逹、他人に見えるね。何も話さないし。」
ナツが言った。
僕は何も言えず、ナツのマンションの前に着いた。
「送ってくれてありがと。またね」
ナツは笑わなかった。
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