strange
それから毎日、病院へ行った。

面会謝絶で、私は病室には入れない。

それでもできるだけ近くに居たかった。

石のように動きもせず、病室の前に座り続ける私を置いて時間はどんどん流れていく。

私の時間は、止まったまま。

担任の粟田先生も毎日のように病院に来ては、慧のお母さんに体に気をつけて…と、励ましていた。

そして私の隣に座り、独り言のように色々なことを話をする。

「大崎さん、自分を責めてはいけませんよ。信じるということは、とても勇気のいることです。それでも、岡里くんが1番信じて待ってて欲しいのは、あなただと思いますよ?」


信じて待つのがこんなにも苦しいなんて。自分を責める以上に…


涙がまたポロポロと出てくる。

「大崎さんと岡里くんが楽しそうに笑っている未来を、僕は信じてます」

また慧の笑う顔が見たい。

声が聞きたい。


慧…会いたいよ…


2月が終わる頃。

慧のお母さんに、制服のリボンを渡した。

「私には、慧しかいません…。起きて慧からネクタイ貰いたいです。このリボン、慧のそばに置いてもらってていいですか?」

慧のお母さんは、涙目で頷いた。


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