あまつぶひとしずく








「ふぅ……」



お風呂上がりの濡れた髪をタオルでこすりながら、部屋に入る。



青を基調とした部屋は女の子らしさはなく、シンプル。

男っぽいという雰囲気はないけど、そんなに綺麗でもない。



そんな、中途半端だけどあたしには慣れた過ごしやすい部屋の窓から、空を見上げた。



「雨、降ってない……?」



がらりと開けてみると、わずかにひんやりした風が頬を撫でる。

雨のにおいが部屋の中に流れこんだ。



久しぶりに雨はやんでいる。

月に住むうさぎが、少し浮かれたあたしを見下ろしている。



……そう、あたしは浮かれている。

康太があたしのためにあんなに綺麗な傘を買ってくれたことが嬉しくて。



どきどきした、胸がきゅんと音を立てた。

とても、幸せだった。



空を見上げたまま、その時の高揚感を思い出し、心がそわそわするのを感じた。



だけど、そろそろ冷静に戻らないといけない。



だってあたしが、康太を好きだという態度をとることはおかしい。

それは、それだけは、できない。






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