あまつぶひとしずく

しとしと





「静音、次は教室移動だよー」

「え! わー、ちょっと待ってね!」



2限目の古典の授業が終わり、次は日本史。

あたしたちだけでなく他クラスと合同で受けるから、教室移動をしないといけない。



だけど静音にしては珍しいことに授業中にぼんやりしていたらしい。

移動だということに気づいていなかっただけでなく、授業が終わったことにも気づいていなかった。

なによりいつも綺麗にまとめられている古典のノートは真っ白だ。



あとであたしのノートを見せてあげよう。

静音ほど見やすくないから恥ずかしいけど。



「慌てなくていいよ。
まだそんなにギリギリじゃないから」

「うん……ありがとう」



眉を下げて笑う静音のために、準備を手伝う。

もふもふと手触りのいい、彼女のうさぎのペンケースを持った。



ふたりで廊下に出た。

外ではしとしとと雨が降っていて、窓は今日も濡れている。



教室の前にある傘立てには、この前康太からもらったあたしの傘がきちんと立てかけてある。



もらった次の日、朝は降っていなかったけど、昼からは結局反動のように大雨になって。

雨が窓を叩く音がうるさかった。



そんな中帰っていたから、傘を差してなお、あたしはまた少し濡れてしまったんだ。



だけど使っているところを見て、康太はとても満足げで……嬉しそうだった。






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