あまつぶひとしずく
ばちばちと睨み合うあたしたちをむすっとした表情で見つめる静音。
康太もそれに気がついたようで、そっと静音に視線をやる。
「康太くん、ちーちゃん」
はい、と言葉を返す。
「食べもののそばで暴れないの」
「すみません」
「ごめんなさい」
静音さん、最強。
あたしたちふたりの珍しい、真剣な謝罪に仕方がないと静音がため息をこぼす。
ふんわりと優しい空気が戻ってきて、そっと肩の力を抜いた。
「今日はね、ゼリーを作ってきたの。
ふたりとも食べられる?」
首をこてん、と傾げた静音が鞄を探る。
彼女のそばに康太がいそいそと身体を寄せた。
「それってこの前のフルーツゼリー?」
「そうだよ。
確か康太くん気に入ってたよね」
「ん、あれ、店で売ってるやつみたいに美味かった!」
話の流れが読めない。
困惑した曖昧な表情であたしはふたりの様子を見守る。
……きっと、あたしの知らないところでふたりの時間があったんだろう。
放課後に部室にでも行った?
それとも土日の間にデートをしたか、どちらかの家に帰って行ったのか……。
ああ、可能性は広がる。
確実なものはなにもなく、ただの予想だけが。